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知らないと怖い私道の落とし穴
あなたの自宅は大丈夫ですか?
ここ最近ちょっとした話題になっている長崎の私道閉鎖の話ですが、耳にされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
長崎市内の古い分譲地内で、最近新たに道路所有者となった不動産会社が地域住民に対して通行料を要求したところ、住民側から支払いを拒絶されたことから私道の入口を閉鎖してしまったという一件です。住民側からは通行妨害の禁止と妨害物撤去を求める仮処分が申し立てられたようです。
分譲地内の私道
世の中の道路には公道と私道の2種類があることは皆さんご存じだと思います。
一般的な大規模分譲地においては、開発地内の道路は整備された後に開発業者から自治体に無償譲渡されて公道になります。公道になれば管理も自治体に移管され、通行料を請求されることもありません。ところが昭和40年代などの古い分譲地では開発業者の名義のまま、つまり他人名義の私道になっているケースが多々あるのです。今回裁判沙汰になっている長崎市内の分譲地もまさにそれに該当します。
一方で、小規模な分譲地においては開発地内の道路は自治体に移管されることは少なく、沿道の土地所有者は各々が私道の共有持分を取得するのが一般的です。
通行・掘削承諾とは
実は、前面道路の私道持分を持っていないと色々とやっかいな問題がでてきます。例えば再建築の時のインフラ工事などです。
家を新築するときには前面道路に埋設された上下水道・ガス管から敷地内に配管を引き込まなければなりませんが、その際には前面道路を掘削したり、工事車両が通行することになります。前面道路の私道持分が無い場合ですと、私道所有者からの工事許可書面がない限り水道工事業者やガス会社は工事をしてくれません。この私道所有者からの工事許可承諾書が、いわゆる「通行・掘削承諾書」といわれる書面です。
住宅ローンを借りる時にも「通行・掘削承諾書」の取得が融資の条件になってきます。金融機関からすると、私道所有者からの工事許可が出ず再建築がままならないとなると担保評価に大きく影響が出るからです。
私道持分の重要性
今回のケースは、分譲当時の開発業者の会社整理にともなって新たに私道の所有者となった不動産会社と昔から分譲地内に住む住民とのトラブルです。新所有者の住民に対する利益優先のスタンスには賛否あるようですが、今回のトラブルの最大のポイントは、分譲地内の住民たちが前面道路(私道)の持分を持っていないという点に他なりません。
旧所有者から新所有者に移行する前に私道持分を取得したり、通行や掘削に関する書面上の取り交わしをするチャンスはいくらでもあったはずです。
今回のようなトラブルになる前に持分取得の交渉や通行・掘削の承諾書の取り付けはやっておくべきだったといえるでしょう。
不動産取引に際して
先ほどお話ししたように、前面道路が私道である場合において、私道持分の有無が資産価値そのものを左右するほど重要な意味合いを持っています。そのため持分の無い私道に面した不動産の売買を行う際には、事前に通行・掘削の承諾を取り付けることが不動産取引上の慣例となっています。実際の現場においては、すぐに通行・掘削の承諾をくれる場合もありますし、こちらが売買に際して急いでいることを知って散々ぐずって引き延ばしたあげく高い承諾料(ハンコ代)を請求されることもあります。いずれにせよ、普段から私道所有者との人間関係を良好に保ちながら早め早めに承諾をもらう準備をしておくことが重要です。
新たに不動産を購入する際も、私道持分の有無や承諾書の取得についてはくれぐれもお気をつけいただきたいポイントです。