BLOG
ブログ
開発型不動産投資のリスクを考えてみる
開発型の取り組みとは
一般的に投資用不動産といえば、賃貸中の物件を指す場合がほとんどです。これから不動産投資を研究してみようという方やすでに収益物件をお持ちの方も、おそらくテナントが入居している稼働中物件をイメージされるでしょう。
実際の投資用不動産の世界にはこのようなテナント入居済みの物件だけでなく、土地の段階から企画して建物の工事を発注し、新規にテナントを募集するという開発型の取り組みもあります。例えば親から相続したロードサイドの土地に店舗を企画してコンビニエンスストアを誘致したり、老朽化した賃貸マンションを最新のスペックで建替えたりする場合が該当します。
土地をお持ちでない場合には、事業用地を新規に取得して最有効利用の方法でプランニングすることもできるでしょう。
不動産開発とは付加価値の創造
将来の収益を確保するために不動産開発を行うということは、いかに付加価値を創造するかということです。
もともと所有していた土地を活かし、収益を最大化するにはどのような企画が最適なのか。老朽化して収益性の低い建物を再建築することで、どのくらい収益性が上がるのか。言い換えると、開発に着手する前と後で、どれだけ不動産価値を増大させることができるのかというポイントに尽きるといえるでしょう。
開発のシナリオが最良のかたちで成就すれば不動産価値が上がりますので、土地だけで売却するときよりも大きな利益を得ることができるはずです。老朽化したままの状態でプロ投資家に買いたたかれるのではなく、再建築することで投下資本以上の開発利益を享受することも可能となります。
開発型で想定されるリスクについて
これまでの不動産投資の世界では、開発型の取り組みはどちらかというとプロの領域でした。
当然ですが、開発型の不動産投資には少なからずリスクも存在します。逆説的にいうと、プロ以外の一般投資家であっても開発型特有のリスクを取りに行くことで将来の利益を最大化できるということが言えます。
今回のコラムでは、更地の段階から、あるいは既存建物を解体したところから建物が完成して収益が出るまでのプロセスで、投資家としてどのような点に気を付けるべきなのかについて考えてみたいと思います。
【土地(開発用地)に関するリスク】
・土壌汚染や地中障害物による土壌改良コストの発生
・埋蔵文化財(遺跡など)発掘のための開発者負担金の発生
・隣接地権者との境界紛争解決コスト(裁判・測量など)の発生
・既存建物テナントとの明け渡し交渉の長期化
【企画設計に関するリスク】
・建築基準法や条例など関係法令の変更に伴う施工コストの増大や専有面積の減少
・行政指導に伴う計画の不認可や事業計画の見直し
・机上の想定建築コストに対する実際の工事見積金額の増大
【建築施工に関するリスク】
・近隣問題(騒音・日照問題など)に伴う補償コストの発生
・施工会社の経営破綻に伴う工事ストップ
・建設現場のトラブル(災害・事故など)に伴う工事遅延
【市場・経済的リスク】
・近隣主要施設(大学キャンパス・工場など)の閉鎖に伴う空室率の増大
・ライバル物件の竣工増加に伴う競争力の低下
・税制改正による税額の増大(税引き後キャッシュフローの減少)
・金利上昇によるレバレッジ効果の減少(リターン・オン・エクイティの低下)
・マクロ的信用収縮(リーマンショックなど)による不動産価値の下落
実際の不動産開発の現場では、必ずしも当初の予定どおり計画が進んで望んだとおりの果実を手にできるとは限りません。むしろ予定どおりに進まないことの方が多いのかもしれません。良い方に転じてくれれば、それはそれでラッキーなことですが、なるべくアンラッキーな結果にならぬよう様々なリスクを想定し検証しておくことが肝要だと思います。
収支計画を立てるときもギリギリで試算するのではなく、多少のコスト変動にはビクともしないくらいの余裕をもって計画されることは投資家にとって必須の考え方だといえるでしょう。