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地方都市のレジ物件に投資するリスク
単年度利回りの落とし穴

地方レジ運用こんなはずでは

今回は住宅系収益物件(通称:レジ物件)の運用についての辛口コラムです。
地方都市のレジ物件は、大都市圏の物件に比べてはるかに高利回りであるケースが多いですよね。例えば、東京の世田谷区でNET4%だとしたら、北海道の札幌郊外でNET7%という具合です。
一見すると札幌郊外の物件の方がはるかにハイパフォーマンスで、迷わず投資するべき物件であるかのように見えますが、実はここに大きな落とし穴が潜んでいます。何年間か運用するうちに次第にこの落とし穴が顕在化してキャッシュフローを痛め、投資家を苦しめる結果となります。地方都市のレジ物件に共通する2つの大きなコストを解説しながら、この問題に迫りたいと思います。


地方レジの過大な管理コスト

一般的に言えるのですが、地方都市の物件は大都市圏の物件に比べて総収入に占める管理コストの割合が高い傾向にあります。
地方都市は大都市圏に比べて賃料水準が低いにもかかわらず、大都市圏の物件と同等あるいはそれ以上の管理コストがかかる場合があるからです。私どもでは日頃から全国のさまざまな収益物件のキャッシュフローを分析する機会がありますが、管理コストの中でもとりわけ目を引くのが原状回復コストとリーシングコストです。地方都市の物件では、この2つのコストが重荷となって収益を圧迫しているケースが多く存在します。

①原状回復コストが家賃3ヵ月分に!
例えば札幌郊外の単身者用1Kタイプ(22㎡)を見てみましょう。1部屋あたりの平均賃料が4万円弱なので、1部屋あたりの年間収入は約45万円といったところです。それに対して賃借人の退去時にかかる原状回復コストは、壁紙総張替え・その他の補修・ルームクリーニングで10万円~15万円、家賃に換算すると約3ヶ月分に相当します。東京の感覚ではほとんど損耗していないと感じられるコンディションでも必ずと言っていいほど壁紙の張替えが実施され、オーナーが負担することになります。需要に対する募集物件の割合が多いので、少しでも競争優位に立つために「フルリフォーム済み」を謳うので仕方ない出費なのかも知れません。これが札幌のご当地ルールといわれるもので、知らないでいると驚くことになります。

リーシングコストが家賃3ヵ月分に!
原状回復に加えてリーシングコスト(賃借人を探すためにかかるコスト)もオーナー負担となります。仲介手数料などのリーシングコスト自体は大都市圏でもかかりますが、地方都市においては需要に対する競合物件が多いため、更にプラスアルファのコストが発生します。賃貸の客付けをしてくれる不動産業者に特別なメリットがないと客付けを後回しにされかねませんので、見込み客を優先的に案内してもらうために必要な経費です。具体的には賃貸管理業者に通常支払う仲介手数料1ヶ月分に加え、客付け業者への謝礼金(広告料)としAD料2ヶ月分がかかります。1部屋あたりのリーシングコストだけで合計3ヵ月分になる計算です。


単年度利回りの落とし穴
一般的な不動産の利回りは、総収入から固定資産税、清掃・保守点検コスト、水道光熱費などの管理コストを差し引いたNOI(純収入)を物件購入価格で割り戻した数値で判断されます。ところが、これは毎年かかる固定費を考慮しただけの単年度利回りに過ぎず、テナントが退去するたびに発生する原状回復コストとリーシングコストが反映されていません。
地方都市のレジ物件では、テナントが退去するたびに家賃収入に換算して6ヶ月分のコストがかかることは先ほど解説いたしました。地方都市では入居者(単身者)の平均的な入居期間が2年弱といわれていますので、テナントは2年間で1回転することになります。1年に換算すると1部屋あたり家賃3ヶ月分がパーになる計算です。更に、原状回復と新規募集に要する期間が2ヶ月程度かかることを考えると、年間で4ヵ月分の賃料に相当するロスが発生する計算になってしまいます。

冒頭で例に挙げた札幌郊外レジ物件のNET7%という数字は、あくまでも単年度の不動産利回りで見たときの話であって、数年間という運用期間で見れば、キャッシュフローベースでNET4%台まで落ち込むケースがザラにあるという現実をご理解ください。
運用期間が長くなればなるほど退去時のコストがボディブローのように効いてIRRを毀損していきますので、投資用不動産を購入検討する際には単年度利回りだけを判断材料としないことを強くおすすめします。地方都市の収益レジをご検討される際には特にお気をつけいただきたいポイントです。

 

 

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