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投資用不動産の価格決定メカニズム
期待利回りとリスクプレミアムの関係
投資用不動産は人気のある物件ほど市場価格が高くなり、利回りが下がります。その逆に、人気がない物件は市場価格が低くなり、利回りが上がります。投資家はこの"利回り感"にとても敏感で、投資可否の判断をする上で重要な要素となっています。例えば、「売主の希望価格では利回り5%だけど、価格交渉によって6%になるなら買っても良いかな。」というような判断をします。このように収益不動産を購入する際の目安となる利回りのことを期待利回りと呼びます。投資用不動産の市場価格は、常に投資家の期待利回りによって決定付けられることになり、下記の数式であらわされます。
投資用不動産価格 = NOI(不動産純収入) ÷ 期待利回り
期待利回りとリスクプレミアム
それでは、投資家の期待利回りはどのようにして形成されていくのでしょうか。
投資用不動産においても他の金融商品の期待利回りと同じく、金融商品の中で最も元本欠損リスクが少ない国債の利回りをベースにしながら、不動産特有のリスク分が上乗せされています。この上乗せ分の利回りをリスクプレミアムといいます。代表的な不動産特有のリスクとしては即現金化ができないことが挙げられますが、それ以外にも物件ごとの地域特性や個別要因から想定されるさまざまなリスクプレミアムが折り込まれます。
地域特性(賃貸・売買市場の動向、利便施設の充実度、街の発展性・将来性、都市計画、人口・世帯数の増減など)
個別特性(建物種別、築年数、規模・グレード、接道条件、周辺環境、インフラ整備状況など)
例えば賃貸マンションの場合ですと、最寄り駅が同じ物件でも徒歩5分で新築・RC造だと期待利回り5%、バス便で築10年・鉄骨造だと期待利回り7%という具合に変わってきます。当然ですが、築浅で構造が堅固なものほど長く安定した運用が可能となりますし、将来売却もしやすいので人気が上がります。期待利回りは、投資家の人気度を数値として可視化したものと言えます。
オフィス系と住宅系の違い
最も期待利回りの低い物件は、Aクラスと呼ばれる東京都心部の大規模かつハイスペックなオフィスビルです。その希少性からテナント入居率は高いですし、入居テナントも財務内容の盤石な大手企業なので賃料滞納リスクもありません。いざ売却する場合でも入札者の行列ができるほどの人気があります。期待利回りは今の瞬間風速で3%前後と言われています。
一方でレジデンシャル(住宅系)の場合はオフィスに比べて原状回復コストのオーナー負担率が高いことや、経年による設備・デザインの陳腐化が早いことなどからリスクプレミアムも大きくなり、期待利回りはオフィスよりも大きくなる傾向があります。
また、地域特性・個別特性以外にも期待利回りに影響を与える要因があります。それは投資用不動産を購入する際の資金調達コストです。資金調達コストとは金融機関からの借り入れをする際の金利のことで、融資姿勢が積極的で金利が低い時代は不動産の期待利回りも低くなります。逆に、融資姿勢が慎重になると金利が高くなり、不動産の期待利回りが上がります。これもある意味でリスクプレミアムといえるもので、金融機関への元利返済ができなくなるリスクを折り込んでいるのです。