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売主不存在の不動産売却は可能なのか?
破産終結後に残された賃貸マンションの話

数年前になりますが、ある債権者(金融機関)から売却を依頼された一棟の賃貸マンションがありました。
債権者から開示された詳細資料の精査と現地調査を行ったところ、共用部・専有部は荒れ放題、空室の新規募集は止まったまま。もうここ何年もまともな建物管理がなされていないことがわかりました。稼働率にいたっては、何と約30%まで低下していたのです。

「これは相当ワケアリだな~」
私たちの本格的な調査がスタートしました。


破産財団の放棄とは

すぐに債権者に確認しましたが、登記簿上の名義人である法人はすでに破産していました。破産手続きも終結しており、しかも代表者は行方不明。
「たのむから先に言ってよ~!」とはまさにこのことです。

所有者が存在しない不動産をどうやって売却すればよいのか。これまで長く不動産を取り扱ってきましたが、さすがにこれは初めてのケースです。
当時の破産管財人弁護士とやっと連絡がとれて聴き取り調査をしたところ、弁護士いわく、法人代表者の自宅などは債権者の同意が得られて任意売却が完了したものの、この賃貸マンションだけはどうしても債権者の同意が取れず、何度も交渉を行ったあげくとうとう売却できなかったとのこと。
その結果、破産管財人弁護士は売却をあきらめ、最終的にこの物件だけを残したまま破産財団を放棄するという選択を余儀なくされたのでした。


債権者の苦悩
破産財団を放棄すると、残された不動産の所有権は債務者(元の所有者)にもどりますが、債務者はすでに実態がないため債権者への債務返済義務は消滅します。一方で債権者の抵当権は残ったままとなり、債権者は回収の見込みのない抵当権を持ち続けるしかありません。債務者の返済義務が消滅しても債権者の抵当権が消滅するわけではないのです。

「何とかしてこの物件を売却し、債権者が不良債権を回収することができないか?」
私たちは知恵を絞りました。

ヴァリューアップに活路を見い出す
人気駅から徒歩圏の立地であることや、建物のグレード・施工精度も高く、この物件本来のパフォーマンスはこんなはずはありません。荒れ放題となっている共用部分をリニューアルし、専有部の原状回復さえ行えば、周辺の競合物件とも互角以上の戦いができるはず。収益性改善の見込みは十分にあると私たちは確信していました。
リニューアルコストの見積もりをとり、ヴァリューアップ後の収支計画を組んでみたところ、想像していた以上の手ごたえを感じることができたのです。日頃よりヴァリューアッド型の投資を好まれるお客様にご提案したところ、その日のうちに購入希望オファーをいただくことができました。

「よし、この価格なら債権者の債権回収目線も何とかクリアできそうだ!」
あとは所有者(売主)のいない不動産をどうやって売却するのかという問題が残りました。

 

ふたたび破産法人の代表者へ
そこで会社の破産・清算に詳しい弁護士に相談したところ、以下の方法であれば売却が可能であることを教えてもらいました。

・再び所有者法人の代表者(清算人)を選任する
・担保不動産を売却して債権者に弁済する
・所有者法人を清算する

このスキームにのっとり、所有者法人の代表者(清算人)には相談に乗ってくれた弁護士に就任してもらい、所定の裁判所手続きを経て何とか無事に売買を完了させることができました。

ところが、このままスムースに終われるかと思っていたところ、いよいよ会社清算の段階になって、売却に伴う売上に対して消費税の納税義務があるのではないかという趣旨で所轄税務署からのお尋ねがありました。
税務署と弁護士の間で侃々諤々とした議論がなされましたが、最終的には弁護士の粘り強い交渉によって、仮に納税義務があったとしても納税原資がどこにも存在せず、清算後は納税者そのものが不存在となるとことを税務署に理解してもらい、なんとか会社清算を完了させることかできました。


荒れ果てていた賃貸マンションも今は美しくリニューアルされ、安定稼働を継続しています。賃料収入も大幅にアップし、いつ売却してもキャピタルゲインが狙える状態にあります。投資家様にとっても、債権者にとっても、私たちにとってもハッピーな結果となりました。


所有者が存在しない不動産の売買は可能か?
答え⇒それは可能です!

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